第3話:線引きの、その先で
正直に言うと、
あの案件が終わった頃、私はかなり疲弊していました。
「もう、しばらくは足を運ばない」
そう思ったのを、今でも覚えています。
時間も労力もかけて動きましたが、
最終的に、仕事として形に残るものはありませんでした。
良かれと思って、
何度も何度も足を運び、
話を聞きました。
でも今なら、
“そこまで背負わなくてもよかった”
そう思える自分もいます。
不動産の仕事は、
どこまで関わるのか。
どこで引くのか。
その見極めも、とても大切なのだと学びました。
誰かのために動くことは大事。
でも、自分を削りすぎてはいけない。
あの経験を通して、
そんなことを痛感しました。
ただ、不思議なことに、
反省だけが残っているわけではありません。
あの時、テナント募集のお話をいただき、
実際に動いたからこそ、
“定期借家とは何か”
その難しさを、身をもって知ることができました。
机上では理解しているつもりだったことも、
実際の現場では、まったく違いました。
人の感情。
立場の違い。
言葉では割り切れない空気感。
それら全部が重なって、
初めて見えてくるものがあるのだと思います。
そして、
あの時はただただ疲れ切っていた経験も、
時間が経つにつれて、
とても貴重な経験だったのだと感じるようになりました。
少しくらい苦い経験の方が、
あとになって、自分の中に深く残る。
きっと、
そういう“スパイス”があるからこそ、
人にも、仕事にも、深みが出てくる。
だからこれからも、
少しスパイシーなくらいの経験も、
甘んじて受け入れていこうと思います。
LIB代表
伊藤 美華
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