第2話:妥協か、理想か。駅徒歩16分の葛藤
「昨日、決まってしまいました」
その言葉を何度聞いたことでしょう。ネットで輝いて見えた物件も、問い合わせる頃には誰かの手に渡っている。良い物件は、まさに「秒」の争いです。
物件探しが難航する中で、改めて浮き彫りになったのは「A様の揺るぎないご希望条件」でした。
- 駅徒歩10分以内
- 1階が店舗、2階以上が住居
- 家賃10万円以下
この市場において、それは決して平坦な道ではありません。 1駅、2駅とエリアを広げてみました。今の立地からは少し離れますが、そうしないと条件に見合う物件が見つからないからです。
そんな中、一つの候補が浮上しました。
駅から徒歩16分。しかし、ここは元・美容室の居抜きで、1階にはすぐにでも開業できるシャンプー台まで完備されていたのです。固定費を抑えたいA様にとっては、条件面だけを見れば「正解」に近い物件でした。
しかし、私がその物件情報を提示したとき、A様の反応は芳しくありませんでした。

「……周辺の雰囲気はいいですね。でも、やはり16分は遠いです。電車で来てくださる年配の常連様が、タクシーを使わなければならなくなってしまう」
内覧に行くまでもなく、A様の心は決まっていました。自分の利便性やコスト以上に、「お客様が無理なく通えるか」。その一点が、A様にとって何物にも代えがたい最優先事項だったのです。
お客様を大切にするその姿を見て、私は「駅チカ」が絶対に譲れない条件だと再認識しました。シャンプー台付きの居抜きという大きな魅力はありましたが、ここで立ち止まるわけにはいきません。

私たちはもう一度気持ちを切り替え、理想の「駅チカ」物件を求めて、探し直すことに。
(次回、駅から徒歩〇〇分!運命の出会いと、怒涛の契約編へ続きます!)
